この特集では、椿貞雄が画家としてデビューするまでの道のりを簡単にご紹介しています。
本日は最終回「画家デビュー」です。
C画家デビュー
椿は、冬休みで帰省していた米沢から劉生に面会を申し込むための手紙を出し、12月29日付で了承の返事を受け取ります。歓喜した椿は、1月2日に慌しく帰郷し、劉生に見てもらうための自画像を描き始めます。
そして、1月9日に、完成した「自画像」と、旧作「道」を持参し劉生宅を訪問したのです。椿は、「批評を仰ぐために持っていった僕の自画像を褒めてくれ、それが劉生自身も嬉しくてたまらないといった様子であったし、僕のために喜んでくれ親切丁寧に注意を与えた事に驚いた」と当時の事を語っています。
劉生の勧めで3月、巽画会第15回美術展に出品し、見事最高賞を受賞します。この展覧会で椿は中央画壇にデビューし、父親から画家になる許しを得ますが、間に入りとりなしたのは劉生でした。画学生としての期間もなく、さらに上京1年を待たずしての中央画壇への登場は異例のスピードだったことでしょう。
ここから、画家としての椿の人生が広がっていくのです。